水素吸入法の有効性を確認する世界初の臨床試験

心停止後症候群に対する二重盲検無作為化試験(HYBRID II Trial)

水素吸入療法が心停止状態から回復した患者の意識状態や身体機能を改善できるか否かを科学的に検証する臨床試験を開始しました。これは水素ガス吸入の有効性を確認する世界で初の本格的臨床試験です。

経緯

私たちは、これまでに、心停止から回復したラットの脳機能の障害が水素ガスで改善することを証明していきました(文献)。これをヒトにも使えるように、すなわち臨床応用をめざして、心停止から回復した患者さんに対して、人工呼吸器を介して水素と酸素の混合ガスを投与する方法を開発し、集中治療の現場で安全に投与できることを確認てきましたた(文献)。

臨床試験の概要

この臨床試験は、厚生労働省から先進医療技術としての認定を受け、2月1日から開始しています。水素ガスの治療効果を最も信頼できる方法(二重盲検無作為化試験:)で検証します。国内の15以上の救急医療機関がこの臨床試験に参加する予定で鋭意準備を進めています。約3年間に計360例の患者登録をめざしています。
この臨床試験の対象になる患者さんは病院外で心臓病のために心臓が停止する心原性心停止の状態(心室細動と呼ばれるような不整脈が突然発生することによっておこります)になり、その後、救急蘇生術によって心臓の鼓動が回復したものの意識が戻らない状態、すなわち意識障害(Glasgow Coma Scale(GCS)<8未満)が残っている20歳以上80歳以下の方になります。

この臨床研究の意義

水素ガスが急性疾患(脳梗塞、心筋梗塞など)や慢性疾患(メタボリック症候群、高血圧、神経変性疾患など)で治療効果のあることは、動物実験や一部の臨床研究で報告されてきました。しかし、水素ガスの治療効果を客観的に評価する臨床試験はこれまで行われていないため、現状では水素ガスを「医療用ガス」として用いることはできません。この臨床試験で治療効果が実証されれば、水素ガスを「医療用ガス」として多くの患者さんに使用する準備が進みます。水素ガス吸入療法は、心停止状態からの回復だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などにも容易に応用でき、高額な医療機器を必要としないため、救急医療に広く普及が見込まれ、大きな効果をもたらすものと予測されます。水素吸入療法の効果を実証する今回の臨床試験は、この画期的な治療法を日本が世界に先駆けて確立し、多くの患者さんを救う契機になると考えています。